ホロンの概念を用いた柔軟な組立ロボットシステム

 現在,生産形態は大量生産から多品種少量生産へと変わりつつある.現行のコンベアラインによる生産システムは,今後望まれるような多品種少量生産には対応できない.これは,耐故障性,汎用性,動的な生産計画への対応力,あるいは設計変更への迅速な対応といった「柔軟性」が欠けているためである.そこで,これらの柔軟さを持った生産システムが研究されている.

本研究は,生産活動の中で特に組み立て作業を取り上げるものとする.そして,汎用的なロボットを用いて,柔軟性の高い組み立てロボットシステムを構築することを目指す.ここで,ホロンの概念を適用することにより,前述の柔軟性をシステムに持たせるものとする.

ホロンは自律性と協調性を兼ね備えたシステム要素であり,ホラーキーと呼ばれる階層型の制御構造を形成し作業を実行する.本システムは,4階層のホラーキーで構成され,その4階層は,機器に対応する実行ホロンと3階層の生産管理ホロンとから成り立っている(Fig. 1).生産管理層と実行ホロンとの通信は契約ネットプロトコルにより行う.頂点のタスクホロンは,製品1個の生産を命令される.命令は下の階層へと受け渡されるにつれて分解され,生産管理層の末端であるオペレーションホロンは,部品の移動,あるいは挿入を担当する.オペレーションホロンは,必要な機器を確保して作業を遂行する.

このシステムを組み立てセルに実装し,組み立ての実験を行った(Fig. 2).その結果,本システムが生産計画の動的な変動に柔軟に対処できることが確かめられた.我々はまた,生産システムにおいて機器の追加や削除を容易にするためのコンセプト,“Plug & Produce”を提案している.このコンセプトを実装し,組み立て作業の途中で新しい機器を追加したところ,新しい機器は直ちに作業に加わった.

Keywords: Holonic Manufacturing, Manipulators, Assembly Cell

参考文献

  1. 相山康道, 原田智和, 杉正夫, 新井民夫:“ホロンの概念を用いた柔軟なロボット群管理システム 第4報: Plug & Produce コンセプトの提案”, 1998年精密工学会秋期講演論文集, pp.558, 札幌, September, 1998.
  2. 原田智和, 杉正夫, 相山康道, 新井民夫:“ホロンの概念を用いた柔軟なロボット群管理システム 第5報: システムの実装とデモンストレーション”, 1999年精密工学会春期講演論文集, pp.558, 東京, March, 1999.
  3. 原田智和, 杉正夫, 相山康道, 新井民夫:“ホロンの概念を用いた柔軟なロボット群管理システム 第6報: Plug & Produce コンセプトの実装”, 1999年精密工学会春期講演論文集, pp.558, 東京, March, 1999.

 

Fig. 1 Holarchy of the system     Fig. 2 Assembly cell