リリース型マニピュレーション

本研究では新しいマニピュレーション――リリース型マニピュレーションを提案した.このマニピュレーションは従来の Pick and Placeのようにロボットハンドにより対象物を堅く把持して操作を行うのではなく,床面上の対象物にマニピュレータにより速度を与え,対象物を摩擦力の作用の下で,慣性によって目標位置に到着させる操作手法である.従来のマニピュレーションに比べて,操作範囲が広い,操作時間が速い,ロボットハンドの機構が簡単などという特長がある.研究内容は以下の(1)〜(5)である:(1) 対象物の速度の加え方(弾く/押し出す,能動的/受動的),初期状態,目標状態に基づいて,リリ−ス型マニピュレーションの分類とその操作手法を考察した.(2) ある初速度の下での対象物の運動,すなわち対象物の位置,姿勢,軌跡と初速度の関係を分析した.これに対する逆問題,つまり物体の停止位置,姿勢,軌跡を与えた場合の物体に必要な初速度を求めることはデータベースを用いて達成された.さらに,ロボットハンドの運動と対象物の運動の関係を解析した.すなわち,ロボットハンドの速度及び弾く位置と対象物の初速度の関係を分析した.目標位置/姿勢と物体の初速度の関係,物体の初速度とロボットハンドの関係を統合してロボットハンドの必要な弾く速度/弾く位置を求める方法を得た.(3) 対象物の速度と位置を計測するために視覚計測を導入し,透視変換と複比(Cross-Ratio)の概念によって,簡単かつ有効な計測システムのキャリブレーション手法を提案し,それを実験に用いた.(4) 視覚を用いた学習制御を導入し,新しい学習方法を提案した.提案した学習方法を用いて,3,4回の試行を行って,目標位置/姿勢への到達精度5%以内とすることが可能になった.(5) 壁との衝突を利用して精度の向上させた.またハンド形状を放物線状にすることによりハンドと対象物間の衝突をなくすことが可能になった.今後の課題は障害物の回避のために,環境との衝突或いはロボットハンドとの衝突を積極的に利用して実験を行うことである.

Keywords: Releasing Manipulation, Friction, Impact, Initial Velocity, Learning Control

参考文献

  1. 相山・茶碗谷・朱・新井,リリース型マニピュレーションの研究:平面運動の基礎的解析と学習による位置決め精度の向上,日本機械学会論文集(C編),62, 602, pp. 34-41,1996-10.
  2. C. Zhu, Y. Aiyama, T. Chawanya, T. Arai, "Releasing Manipulation", Proc. IEEE/RSJ IROS’96, Osaka, pp. 911-916, 1996.

Fig.1 A Example of Releasing Manipulation