グラスプレス・マニピュレーションを用いた操作計画

グラスプレスマニピュレーションとは,環境を利用して対象物を操作する手法であり,大きく重たい対象物を操作する際や,または,直接把持できないような複雑な環境下での作業に有効である(Fig.1).しかし,対象物が環境と接触しているため,対象物・環境・指の間に過大な内力が発生する危険性が存在する.また,堅く把持しない操作であるため,作業中に対象物を取りこぼしてしまい操作が失敗する可能性も存在する.そこで,これらの操作の失敗を防ぎ,確実に操作が完了するためには,事前に操作計画をたてることが必要となる.本研究室では,以下のように,グラスプレス・マニピュレーションにおける操作計画手法に関する研究を行っている.

(1)対象物の安定度を考慮した操作計画法の提案

 操作が確実に行われるための評価関数として安定度を定義する.定義された安定度と,指と環境の幾何的な干渉を判定することで,対象物のコンフィギュレーション空間の中で操作可能領域を求め,その中で最適経路を計算する.これによて,最適な指配置・指の持ち替え位置,および対応する指力を得ることができる(Fig.2).

(2)対象物に与えるコンプライアンスの設計

 対象物に与えられるコンプライアンスを,ロボット指のコンプライアンスから設計することによって,微小な位置誤差による過大な内力の発生と,望ましくない方向への対象物の運動を防止する.

 以上によって,複雑な環境下での作業において,対象物・環境の幾何形状や力学特性,作業内容に柔軟に対応した,最適な操作を自動生成する.

Keywords: Graspless Manipulation, Dexterous Control, Compliance, Motion Planning

参考文献

1) 相山 他: “グラスプレス・マニピュレーションの研究,” 日本ロボット学会誌, Vol. 14, No. 1, pp.114-121, 1994.

2) Y. Maeda, Y. Aiyama, T. Arai, T. Ozawa: Analysis of Object-Stability and Internal Force in Robotic

Contact Tasks in Proc. 1996 IEEE/RSJ IROS’96, Vol.2, pp.751-756, Osaka(Japan), Nov, 1996.

3) K. Kimura: Analysis and design for Object Compliance in Graspless Manipulation in Master thesis, faculty of Engineering, The University of Tokyo, 1998.

 

Fig. 1 Picking a book from a shelf

 

Fig.2 Feasible manipulation region