環境に対し柔軟な戦略をとる移動ロボット群による協調搬送

本研究では,複数台の移動ロボットを用いた作業遂行性の高い協調作業システムの実現を目指し,環境状況に応じ柔軟に協調戦略を変更する移動ロボットの動作計画に関する研究を行っている.複数台の移動ロボットによる搬送作業に対する要求仕様は,効率良く確実に作業を遂行することである.すなわち,認識した環境情報に基づき,通路上の障害物への対処など,困難な状況は打破する動作計画を行う必要がある.しかし各ロボットのセンシング能力(範囲や処理能力)には限界があり,個人の情報のみによって対象物周辺を十分把握するのは難しい.ここで作業遂行性の高い人間の作業を観察すると,作業を行う上で次のような特徴があることが分かる:(1)物を運ぶ者だけでなく,通路上の障害物の除去,行く先の偵察など,その状況で必要な様々な役割を分担しながら,総合的に作業を行っている(Fig.1).(2)また物を運ぶ者に注目すると,通路が狭く自らの体が邪魔になる場合には,把持位置の変更によって作業の遂行に努めている(Fig.2).(3)比較的広いところでは遠方,逆に狭いところではぶつからないように出っ張った部分,また2人いれば別々の方向など,主に意識を向ける対象を作業者や状況に応じて変化させることで,作業に必要な周囲の情報を効率よく得ている(Fig.3).

そこで本研究ではこれらを参考にし,環境に応じた“協調センシング戦略”を考慮した“動的な役割分担”を伴う動作計画手法を提案する.具体的には注視方向(視線)と作業位置の動的な計画を行う(Fig.2).周辺環境への柔軟な対応のための基本戦略として,(2)の把持位置の変更(持ち替え)のみを導入した場合について,シミュレーション及び実験により提案手法の有効性を確認した[文献1)-3)参照].

Keywords: Multiple Mobile Robots, Cooperative Transportation, Task-assignment, Regrasping

参考文献

  1. 太田順,他“持ち替え動作を導入した移動ロボット群による大型対象物の搬送制御”,日本機械学会論文集,63巻605号C編,pp.174−181,1996
  2. Natsuki MIYATA, et al.: Cooperative Transport with Regrasping of Torque-Limited Mobile Robots, In Proc. the 1996 IEEE Int. Conf. on Intel. Robots and Systems, Osaka, Japan, November 1996.
  3. Natsuki MIYATA, et al.: Cooperative Transport System with Regrasping Car-like Mobile Robots, In Proc. the 1997 IEEE Int. Conf. on Intel. Robots and Systems, Grenoble, France, September 1997.

 

Fig.1 Dynamic Task Assignment Fig.2 Change of Attention and Sustaining Position Fig.3 What to plan?