交通信号網の自律分散型制御
(湯浅助教授・新井教授)

スプリットとオフセットの自己組織化 (動画:MPEG) 高解像度版、11MB (動画:AVI)

自動車の保有台数が増加するのに伴い,渋滞の発生等の問題が顕著になっており,既存の道路をより効率良く利用することが必要である.そのための具体的な方法の一つに信号機制御がある.信号機制御には単独制御(個々の信号を独立に扱い,他の信号の影響は考慮しない),系統制御(同一道路上の信号群を調整する),および広域制御(系統制御を道路網に拡張したもの)の3種があるが,特に広域制御は大きな効率改善が期待できる.従来の広域制御は,交通量調査に基づいてオフライン最適化問題を解き,得られた解に従って信号機群を集中管理する.しかしこの方法では事故など想定外の状況や交通流の動的な変化に対処することが困難であり,また計算量の問題があるため,制御対象地域を拡大することも難しい.

本研究は信号機の自律分散的手法によって交通信号網の広域制御を実現する.具体的には,信号網をグラフで表現し,非線型結合振動子として信号機をモデル化する.そして信号機の挙動をグラフ上の反応拡散方程式によって記述する(Fig. 1).各信号は,それぞれの局所的な交通状況に応じ,スプリット(信号機が各方向の交通流に与える青信号時間の比)とオフセット(隣接する信号同士の青信号開始時刻の差)を調節する.これにより,動的交通流への対処や広い制御対象地域への適用を目指す.

簡単な環境(碁盤状の道路網,右左折はなく直進のみの交通流)を想定してシミュレーションを行い,提案手法の有効性を調べた(Fig. 2).その結果,提案手法は定常的な交通流に対して高い交通効率を実現するとともに,交通流が動的に変化する場合にも迅速に対応できることが確認できた.

今後の課題としては,サイクル長(信号の周期)の制御,より現実的な環境(交通流の右左折や一般的な形状の道路網など)への拡張などが挙げられる.

   Keywords: Traffic Signal, Coordinated Control, Nonlinear Oscillator, Reaction-Diffusion Equation on a Graph

References

Masao Sugi, Hideo Yuasa and Tamio Arai: “Autonomous distributed control of traffic signal network,” Intelligent Autonomous Systems 7 (IAS-7), IOS Press, pp. 317~324, 2002.

杉正夫,湯浅秀男,新井民夫:“グラフ上の反応拡散方程式による交通信号網の自律分散型制御”,計測自動制御学会第14回自律分散システム・シンポジウム予稿集,pp. 235~238, 2002.

              

           Fig. 1  Overview of Present method                           Fig. 2  Traffic Simulator