未知環境における複数移動ロボットによる繰返し搬送計画

本研究では,複数移動ロボットによる作業の中で基本的かつ重要な作業であり,工場内でのワーク搬送等,産業界における需要が想定される多数物体の繰返し搬送作業を扱う (Fig.1).本作業を実際の作業現場で行う場合,生産ラインのレイアウト変更や用いるロボットの性能や台数,搬送する物体の性質などの,環境の動的な変動が想定され,これに対応して自律的に効率の高い搬送形態を獲得する動作計画手法が求められる.

このような動的環境下における作業を扱った従来の研究では,反射行動や単一の学習手法によるものが多く,収束に時間がかかりすぎる,あるいは作業実現の効率性の評価が困難であるなどの問題点があった.これは,複雑な作業に内在するレベルの異なるいくつかの問題を同時に扱おうとすることが原因となっている.これに対し,複雑な作業を要素的な問題に分割し,それらを個別に扱うことによって効率の高い動作計画の実現が可能である.本研究では,未知環境における繰返し搬送を,(1)環境情報の獲得,(2)搬送に適した経路の生成,(3)経路上でのロボットの行動学習によるロボット群形態の獲得,の3段階に分割し,これらを個別に扱う.(1)環境探索フェーズでは,Learned Visibility Graphにより協調的な探索を実現する.(2)経路生成フェーズでは,繰返し搬送作業の特徴を考慮し,往路と復路のロボットがすれ違うことのできる2車線経路を導入した1車線2車線混在経路を生成する.(3)戦略形成フェーズでは,強化学習手法の一種である漸進的戦略形成手法を用いて各ロボットの行動を学習し,効率の高いロボット群形態を獲得する.

以上の手法の有効性を検証するため,計算機によるシミュレーションを行った.シミュレーションでは,2つの未知障害物が存在する環境下において4台のロボットによる繰返し搬送を行った.環境の動的変化への対応を検証するため,ロボット間で搬送物体を受け渡すコストをある時点で増加させた.Fig.2はシミュレーション環境及び生成された搬送経路を示している.戦略形成フェーズにおいては,物体を受け渡すコストを変化させた結果,ロボット群の形態は最短経路を用いて互いに物体を受け渡すリレー型搬送から受け渡しを避けたループ型搬送へ動的に変化した(Fig.3).このことから,本手法により動的な環境に対応して効率のよい作業形態を自律的に獲得する動作計画が行われていることが確認された.

Keywords: multiple mobile robot system, motion planning, learning

参考文献

Kousuke INOUE, Jun OTA, Tomokazu HIRANO, Daisuke KURABAYASHI and Tamio ARAI : “Iterative Transportation by Cooperative Mobile Robots in Unknown Environment,” Proceeding of International Symposium on Distributed Autonomous Robotic Systems (DARS’98), to be appeared, 1998.

 

  

Fig.1 Iterative Transportation Task Fig.2 Generated Paths Fig.3 Dynamic Group Formation