道具を用いた移動ロボットによる物体操作

本研究では,移動ロボットが道具を用いることにより,物体操作を簡単かつ効率良く行う手法を提案する.単体移動ロボットの能力は限られているため,複数移動ロボットが協調作業を行うことが考えられる.しかし,移動ロボットで協調作業を行う場合には,各移動ロボットに誤差が生じる等の原因により,作業をうまく行うことが出来ないことがある.そこで,移動ロボットが道具を用いることにより,協調性能を向上させて作業を遂行することとする.道具を用いた移動ロボットによる作業の概念図をFig.1に示す.

Fig. 1 Overview of multiple mobile robots system with tools

移動ロボットが道具を用いる利点として,移動ロボットが様々な形状の物体を把持して取り扱うことと比較して,道具を把持しその道具を用いて物体を取り扱うことの方が容易であることが挙げられる.また,大きな力が必要な場合には,道具を用いて移動ロボットの力を合成することが可能である.状況に応じて柔軟に道具を持ち替えることにより,柔軟な作業を行うことも考えられる.

本研究では,棒や板のような堅固な道具と,紐や布のような柔軟な道具に分類し,道具の特性を利用した作業を行っている.堅固な道具を用いた場合には,対象物に強い制約を加えることが可能であり,ロボットの作業範囲や操作力を増大させることが出来る.従って,細い棒を用いて狭い場所にある物体を操作する作業や,棒を「てこ」として用い重い物体を取り扱う作業が可能となる.ここでは,棒を用いて複数物体を整列させる作業に関して,どの方向から物体に接近することにより整列が可能となるかについての解析を行った(Fig.2参照).また,柔軟な道具を用いることにより,複雑な環境下において柔軟に作業を行うことが可能である.従って,紐を用いて様々な形状の物体を安定して搬送する作業や,複雑に配置された物体に関して,目的の物体のみ選択して搬送する作業が可能となる.ここでは,紐を用いて数種類ある物体を仕分けする作業について,各移動ロボットの移動経路に関する動作計画を行った(Fig.3参照).これらの作業については,道具を用いたロボットにより実機実験を行い,その有効性を確認した.

Keywords: Tool, Multiple Mobile Robots, Cooperation, Manipulation, Transportation

参考文献

  1. 山下淳, 佐々木順, 相山康道, 太田順, 新井民夫 : "道具を用いた複数移動ロボットの協調による物体搬送", 日本機械学会ロボットティクス・メカトロニクス講演会講演予定, 1998.

      

Fig. 2 Result of proposed analysis by using a stick

Fig. 3 Paths of mobile robots with string