2台の4脚ロボットによる物体の協調搬送

 従来より車輪型ロボットによる協調搬送は研究されてきたが,車輪型ロボットでは段差や凹凸のある環境における作業は不可能である.そこで,本研究では段差や凹凸のある不整地において自律的に動作可能な4脚ロボット2台による物体の協調搬送を行う.脚型ロボットで協調搬送する場合,搬送物体の状態量を逐次フィードバックする車輪型ロボットと同様な制御手法を取ることは難しい.それは,(1)歩行時のロボットの胴体振動が大きく,搬送物体の位置・姿勢の正確な測定が困難であること,(2)脚型ロボットの可搬重量が車輪型ロボットに比べて小さく,大がかりな把持機構の搭載が困難であることによる.そこで,本研究では,脚型ロボットに適した搬送手法として2通りのアプローチをとる.
        (A)大きなコンプライアンスをもつ把持機構で搬送物体を把持する方法.
        (B)周囲にストッパーのある台に搬送物体を載せる方法.
 (A)の手法は,大きなコンプライアンスをもつゴム状の把持機構により搬送物体を把持し,搬送物体を介してロボット間に働く力覚情報を測定する(Fig.1).各ロボットは自己の力覚情報のみに基づいて,歩行速度と歩行位相の制御を行う.歩行速度制御によりロボットは搬送物体の速度に追従してロボット間距離を一定に保つ.歩行位相制御により歩行速度を変えずに鉛直方向の胴体振動の位相を制御し,2台のロボットの歩行を同位相にする.
 (B)の手法は,ロボットは搬送物体を堅く把持せず,搬送物体の落下防止用ストッパーを周囲に取り付けた台上に搬送物体を載せて,この台上で搬送物体が滑ることできる機構を採用する(Fig.2).各ロボットはこの簡単な機構を用いて,自己の台上の搬送物体のおおよその位置・姿勢を測定する.各ロボットは予め割り当てられた動作ルールに基づいて自律的に動作し,ルールベースに基づく搬送システムを構築する.
 搬送形態はリーダ・フォロワ型をとり,1台のロボットに平面内の目標軌道を与え,他の1台のロボットがそれに追従する.このとき,各ロボットの行動は以下の3層からなる:(a)予め与えられた歩容に基づく歩行,(b)各脚の脚先に設置された接触センサに基づく反射行動,(c)エンドイフェクタ上の物体の位置・姿勢に基づく動作.搬送手法(A)(B)ともに,ロボット間で各々の搬送物体情報を明示的には通信せず,動作(c)によって協調性を保つ.

参考文献

  1. Yasumichi Aiyama, et al.: "Cooperative Transportation by Two 4-legged Robots with Implicit Communication", 4th International Symposium on Distributed Autonomous Robotic Systems, 1998.
  2. 原光博,他:”不整地における2台の脚型ロボットによる物体の協調搬送”,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会’98講演論文集, 1998.
  3. 西林ひなた,他:”2台の脚ロボットによる自律的協調搬送”,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会’98講演論文集, 1998.
    

Fig.1 Walking velocity control and walking phase        Fig. 2 Rule based control using supporting mechanism
        control using grasping mechanism